山内鮮魚店店長の山内です。遡ること4月下旬。南三陸の桜も葉桜へと変わるころ。当社では新たなプロジェクトがスタートしました。
それはお客様が実店舗でお買い物をする際にお渡しする「紙袋」をつくるプロジェクトです。でも、ただ当社のロゴを入れたデザインを入れてもつまらない。せっかくなら、地元と協力して南三陸をアピールできるものがいい。そこで考えたのが、南三陸町にある「のぞみ福祉作業所」のみなさんの力を借りる、というアイディアでした。
『のぞみ福祉作業所』とは
南三陸町役場の横に位置する「のぞみ福祉作業所」は、障がいを持つ方々の生活・作業支援を行う生活介護施設。震災前の施設が流失し、現在仮設の施設で事業を行なっています。
中でも特徴的なのが、障がいを持つ方々が作る様々なグッズの数々。紙パックを再利用した『紙漉きハガキ』や、オリジナルのイラストをあしらったグッズ。
ここ最近は、紙を使ったブランド『のぞみペーパーファクトリー』も立ち上げ、様々なアーティストとのコボレーションも精力的に行っているんです(写真は紙漉き作業風景)。
こちらは南三陸のモアイをモチーフにしたタオル。このイラストも「のぞみ」に通う方が描いたイラスト。愛嬌があってとっても素敵ですよね。>>のぞみ福祉作業所の商品はこちらで購入できます
実は以前この場所を訪れた際、この制作物を見てとても共感を覚えました。いつか彼らと一緒に物作りができればこんなに楽しくて嬉しいことはない。そう思いながら数年がたった今年、彼らにイラストを描いていただき、それを紙袋に採用しようという案を思いついたのです。
(1)紙袋制作プロジェクト 〜イラストづくり編〜
2017年4月下旬、いよいよプロジェクトが本格始動しました。場所は「のぞみ福祉作業所」内の作業所。集まっていただいたのは作業所のみなさん数十名。山内鮮魚店からは、私店長(カメラマン役)とデザイナー後藤、受注スタッフ佐藤の三人が参加しました。
この日集まっていただいたのはこちら。ヒラメにソイにホウボウなど、南三陸で水揚げされる鮮魚を持ち込み、これを見ながらイラストを描いていただくという試みです。写真よりも実物の方がリアリティも出ますし、立体的に観察できるのがいい。そんなリクエストを福祉作業所の方々から頂いていたのです。
そしていよいよイラスト制作がスタート。まずは好きな魚を選んでいただき、好きな絵を思い思いに描いていただきます。
始まって早々、気づいたことがあります。それは皆さん本当によく「観察」をする。様々な特徴を探し、目に焼き付けながら丁寧に描いているんです。
南三陸のソイも嬉しそうです^^
当店スタッフは補佐役でみなさんをサポートします。
それにしても、彼らの真剣な目。集中力はものすごいものがあります。
見てください、このイラスト^^ ホウボウの特徴を上手に捉えてます。しかも表情まで豊か^^
すごく楽しそう!というのもその理由は、途中で起きたこんなハプニング。
モデルの「ヒラメ」の活きが良すぎて、何度も何度も飛び跳ねます(笑)
現場も大騒ぎ。思わず手でヒラメを押さえてしまうほど(笑)
そしてイラスト制作はどんどん進んでいきます。しばし楽しそうな風景をごらんください。
こうして描いていただくこと2時間。できあがったのは、およそ50枚の海産物たち。ものすごい量のイラスト素材が完成しました^^
(2)紙袋制作プロジェクト 〜選定・デザイン編〜
イラスト素材が出来上がったら、今度は選定とデザイン。まずは描いていただいた50超のイラストをできるかぎり選定していきます。
選定のポイントは、食材と描いた人。『今回イラストを描いて頂いた方、その全員分を紙袋に掲載したい』。当社デザイナー後藤から、そんな提案がありました。僕も同じ考えです。
選定は”楽しく”難航。それはそうです。みなさん本当に個性があっていい絵を描く。見ているだけで楽しくて仕方がありません。
選定の後はデザイン。まずはイラストを1枚1枚スキャンし、データに置き換えていきます。さらに印刷に耐えられる「線の太さ」を確保するため、当社デザイナー@後藤が、イラストをトレース。太さなどを変えられるデータに作り直します。この作業がかなり大変でした。
トレース後は、イラストのレイアウト。紙袋の実寸デザインに合わせて、描いていただいた数十枚のイラストを配置していきます。
納得のレイアウトができあがるまで、約3日。完成が近づいてきました。レイアウトが決まったらデータを印刷業者に送ります。同時に、印刷業者さんも交え、印刷する紙袋の「紙質や厚さ」も打ち合わせを重ねていきました。
そして色校正当日。デザイナー@後藤と共に、印刷業者さんの工場へ。全体的なイラストの濃さ、明瞭度などをチェックし、何度も色校正のテスト紙を出力していただく作業です。
そしてようやく納得のいく色校正ができあがり、契約書代わりにテスト紙にサイン。7/4ということは、ここまでくるのにおよそ2ヶ月半。あとはこの工場で印刷→組み立てをへて、ようやく紙袋の完成です^^ ワクワクしますね。
(3)紙袋制作プロジェクト 〜完成品の全貌〜
企画からおよそ3ヶ月半。ようやくできあがったのがこちら。のぞみペーパーファクトリー&山内鮮魚店が共同制作した、紙袋です。
南三陸湾に生息するホヤ、タコ、ワカメ、ホタテ、鮮魚などの海の幸。南三陸らしい穏やかな海。飛び交うウミネコ。さんさんと照りつける太陽。そして船の上にはカモメが^^ 表面と裏面すべてで、南三陸の海を表現したすばらしい紙袋ができました。
そして紙袋には「のぞみペーパーファクトリー」のロゴと文字も。今回、描いてくれたすべての方々のイラストを入れています。まさにみんなで作り上げたデザインです。
実は今回、当社の社名も彼らに描いていただき、採用させていただきました。フォントの機械的な文字ではなく、どうせなら楽しい紙袋にしたい。そんな当社の思いも込めております。
(4)紙袋制作プロジェクト 〜完成品手渡し 当日〜
7月18日。当社デザイナー@後藤が完成品を持参し、のぞみ福祉作業所へ。実際に手渡しし、のぞみのみなさんに感謝の気持ちを伝えました。見てください、この嬉しそうな顔♪
『あ、あった!私が描いたイラストだ!』そんな声があちこちから聞こえてきます。
一生懸命観察して、真剣にイラストを描いてくれた皆さん。
あの絵がこんな形になったんだ!と思ってくれればうれしいですね。
イラスト制作中に、ヒラメが飛び跳ねて驚いたのも、楽しいピソードになりました^^
こんなに嬉しそうにしれくれるなんて、こっちまで笑顔になります。
出来上がった紙袋を見てご満悦のみなさん。あなたたちの才能は本当にすばらしいと思います。
こちらも嬉しそう^^ イラストに真剣に取り組む姿、とっても素敵でした^^ ありがとう♪
最後にみんなでパシャり。
「できること」が増えるより、
「楽しめること」が増えるのが、いい人生。
これは斎藤茂太という日本の随筆家の言葉です。
今回彼らと共に制作させていただき、「楽しむ」ということの大切さをひしひしと感じました。
同時に彼らの才能の豊かさに驚かされてばかりでした。
上手に描くこと、上手にできること、ではなく
観察し、集中し、みんなで楽しみながら描くことの豊かさ。
山あり谷ありの人生を、いかに楽しめるか。
今回のプロジェクトは、当店スタッフにとっても、本当に楽しくて仕方のない時間でした。
ひとつのプロジェクトをこんな風に成し遂げたことは、初めてかもしれません。
制作中も、なぜか心が豊かになる。
なぜか楽しくて仕方がない。
今回、この「紙袋プロジェクト」を進めるにあたり、ご協力いただいた「のぞみ福祉作業所」の皆さんに、当社を代表し心から感謝申し上げます。
この紙袋は、当店実店舗でお買い物いただいた際にお配りしております。
南三陸にお越しの際は、ぜひ手にとってじっくり見て見てください^^