南三陸タコ漁

先日ある機会をいただき、地元南三陸の「タコ漁」に同行させて頂いた。南三陸志津川湾といえば「西の明石、東の志津川」と言われるタコの名産地。地元だから言う訳ではありませんが、このタコに勝るタコがあれば教えてほしいくらい美味しいのです。

 

その秘密はまぎれもなく「餌」。雑食であるタコは様々なエサを食べて成長しますが、南三陸のタコが生息する海底は三陸名産の海産物がわんさか。高級アワビを含め、旨味を含んだ魚介類をたらふく食べてこのタコは育つ訳です。おいしくないはずがありません。

 

作家の嵐山光三郎さんが以前、南三陸のタコを「グルメなタコ」と称したのは有名なお話。ここからは当日の写真も含め、南三陸名産のタコ漁を少しだけご紹介します。

 

南三陸のタコ漁

南三陸内湾の朝

朝5:00に家を出発。現場へ向かうため国道45号線を走ると写真のような見事な景色。南国の人ならすぐにでも車内に戻りたくなる寒さですが、南三陸人にとっては11月の潮風もナカナカいいもんです。

 

南三陸タコ漁

港に着くと見えたのは「気嵐(けあらし )」。気嵐(けあらし )は、冬の朝に海水温が大気温より高い時に見られる現象です。

 

南三陸タコ漁

出航したのは朝6:00近く。漁師さんの中型船に乗り込み、沖ですでに始まっているという「タコ漁」の現場まで向かうことに。グイグイと潮をかき分け進む船は、いつ乗っても胸が踊ります。

 

南三陸タコ漁

沖へ進むにつれ、朝焼けが眩しいくらいに突き刺さってくる。水しぶきと朝焼けを浴びながら進むこと10分。タコ漁の現場に到着。漁師はいつもこんな景色を見ているのかと思うと、実に羨ましい気持ちになります。南三陸の内湾は、ちょうど手で囲むように地形に守られているため、内湾はまるで湖のように穏やかなのが特徴。ひとたび沖にでると船は一気にグラグラ揺れ始めます。

 

南三陸タコ漁

タコを獲る仕掛けは、この「籠網」。昔は陶器製の壺だったと教えてくれましたが、これにエサを仕込み、前日のうちに海に沈めておく。沈める場所は、なんといっても漁師の「勘」でしかない。ひとつの籠網には2ハイのタコが入っているときもあれば、ゼロの時もあるといいます。ワクワクしながら見ていると入ってる入ってる、見事な南三陸のタコが。

 

南三陸タコ漁

どうです?見事でしょう。水揚げしたのは「水ダコ」といって、全国で最も水揚げされる種類の大型タコ。雑食で食いしん坊な反面、味は甘みがあって柔らかいタコです。

 

南三陸タコ漁

網をセットした専用の筒に、こうしてタコを入れていきます。これで傷も付かずタコも逃げづらい。市場にはこの網のまま水揚げします。

南三陸タコ漁

そして再び場所を変えては水揚げし、変えては水揚げしの繰り返し。一緒に乗船させてもらったタコ網を揚げる小型船は、小さな波でもグラグラに揺れまくる。海底から網をひっぱると、当然のように船が傾いていく。それを体を使ってバランスをとりながら上手に水揚げしていく。これを1日に何十個と引き上げるのだから、瞬発力と持久力が必要な大変な仕事です。

 

南三陸タコ漁

私が引き上げたのは朝7:30。もちろん漁の邪魔になるので途中で引き上げました。網で大量に捕獲する鮮魚漁に比べ、タコ漁は前後こそあれ「仕掛けた籠」の数だけの水揚げになるでしょう。大変な作業です。

 

こういう生産者の現場を間近で見ると、安さばかりを求めてくる大手商社や大手スーパーのバイヤーなどは、一度無理矢理でも漁に連れて行きたくなってしまいますね。何事にも適正価格というものが、やはりあるのです。

 

南三陸のタコ

こちらが南三陸のタコを塩茹でした、南三陸名物「志津川だこ」。そしてこうして真っ赤に茹で上げたタコも、実は科学的な色付けは一切しないのが南三陸流。独自の製法で、見事な色付けと味わいを各販売店が作り出しています。

 

たこのお刺身

そしてこれが南三陸名物「タコ刺し」。南三陸では「生」ではなく、塩茹でして刺身で食べるのが最も愛されている食べ方。これは水ダコ。柔らかくて弾力のある身を一口頬張れば、ジュ〜シ〜な甘みと旨味が一気に口の中で広がる。これよりも美味しいタコはやはり見当たらない気がします。

 

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<お客様の声>

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ホタテと一緒にお願いしました。たかがタコ、されどタコでした。たくさんタコを食べてきましたが、今までのは何だったのか、そんな思いをさせられた逸品でした。

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