山内鮮魚店店長の山内です。今年も残すところあと1ヶ月ですね。もう何度もこのBlogで書いていますが、南三陸町にあるこのお店に行くと、ついついBlogでご紹介してしまいます。実に美味しいお店です。
国道398号線、南三陸町の中心部を抜けて、山間部へ進むこと10分。ここは入谷地区(いりやちく)と言って、昔ながらの茅葺き屋根も多く、人々の暮らしも昔と変わらぬ生活が存在する場所です。南三陸には海も山もあるんです。この入谷地区で震災後「蕎麦処」を始めたのがこの「すがわら」。
店主はまだ30代と若いですが、高校卒業後すぐ大阪北新地や東京日本橋、銀座などで日本料理を学んだだけあって、作る料理はワンランク上のものばかり。私店長も行きつけで、いつも腹ぺこなせいか「カツ丼・そばセット」が定番でしたが、食に携わるものとしてこの際全メニューを食べてみようという勢いで入店。
今回注文したのは「上天丼」ですが、これがまた何とも言えない軽さ。東京で暮らしていた時、ごま油たっぷりの天ぷら専門店で食べて以来、あまり好きでなくなってしまった天ぷらですが、ここのは関西の日本料理に影響を受けているため、非常にしつこくなくサクサクとした歯ごたえと食べた後の軽さが絶妙ですね。
また素材も自宅の畑でとれる野菜など、その素材をきっちり活かした揚げ方をしているので、油を感じることなく素材が楽しめるのも嬉しい。なのでこの上天丼、女性でもペロリと平らげてしまうそうです。しかも今回驚いたのは、いつものお味噌汁が「お吸い物」になっていたこと。これがまた普通の蕎麦店では味わえない料亭レベルのお吸い物でした。店主に聞くと最近お味噌汁からこちらに変えたようです。この味がランチで楽しめるようになったのはかなり嬉しいですね。これだけでも行く価値があります。
全国どこもかしこもその土地に根ざした「味」というのがあります。東北は間違いなく「濃い味」。関西は「ダシ文化」。私は東北人ですが、味の繊細さについては西日本のお料理がやっぱり抜きん出ている気がします。はじめてのお店にふらっと入っても大概美味しいのは福岡あたりでしょうか。京都はもちろん美味しいですし、大阪の注文してからお料理が出てくるスピードにはいつも驚きます。しかも外れがない。北海道だと普通の居酒屋でも驚くほど美味いほっけに出会える。
南三陸ももちろん「濃い味」だと思います。そんな中で、こうして関西のダシ文化を主にした日本料理店はとりわけ「薄い」と地元の人達に言われるかもしれませんが、日本料理の神髄でもある「手間ひま」をかけ、繊細な味付けで素材の良さを大切にするお店は、おそらく宮城県でも数少ないでしょう。振り回されることなく、繊細な日本料理を提供し続けてほしい、そう願います。
そして実はこの「すがわら」。「そば処」ではなく「日本料理店」としての顔が、実は夜の部にあるんです。いつか東京の友人と二人で味わった「鴨鍋」が今でも忘れられません。日本酒を頂きながらつきっきりで作って頂く鴨鍋。絶妙な食感で提供してくれる鴨肉と野菜の数々。そろそろ寒くなってきましたので、もう一度幸せを感じに夜のすがわらに行きたいところです。
■日本料理 すがわら(割烹)
http://progress-minami-sanriku.blogspot.jp/2012/04/blog-post.html