南三陸、鮭が遡上する二つの川
山内鮮魚店店長の山内です。
南三陸町は朝晩だけでなく昼間も風が涼しくなってきました。
すっかり秋ですね。潮風が気持ちよく過ごしやすい季節です。
来月にはいよいよ鮭の遡上が始まります。
南三陸町志津川地区には、二つの川があります。
国道398号線に沿って町の中心部を流れる「八幡川(はちまんがわ)」と、それよりも少し南、県道172号線沿いを流れる「水尻川(みずしりがわ)」。
それぞれが上流から南三陸内湾と繋がっています。
実は南三陸町は、秋鮭(あきさけ)の水揚げ量が宮城県内一の港。
その理由は南三陸で行っている「鮭の孵化」にあります。
ご存知のように鮭は毎年秋になると、はるばる故郷の川に戻って来ます。
そして上流へと流れに逆らいながら進み、全身全霊をかけて子孫を残すという習性があります。
南三陸では、その鮭を遡上途中で塞き止める柵を設け、遡上する鮭を捕獲し人工授精をさせ、ふ化させた稚魚を川に戻すという取り組みを何年も前から行ってきました。
そうすることで毎年の鮭の遡上数を増やして来たのです。
そのため南三陸湾では毎年大量の秋鮭が水揚げされていましたが、残念ながら2011年、その何万匹にも及ぶ鮭の稚魚を放流する数日前に、あの震災が起こりました。
そのため稚魚を放流する事ができなかったのです。
鮭は放流してから4年で故郷の川に戻って来ます。
今年は震災から3年目の年。
つまり、震災の前年に放流した稚魚が戻ってくる年です。
南三陸の水産業の約6割を占める「秋鮭」。震災後の深刻な悩みは尽きません。